【蝉の抜殻B】

 

『ねぇねぇ?ひろき?しってた?』

 

 


弘樹の知らないことを言ってやりたかった。

 

背伸びをしたかった。

 

 


「なにをぉ?」

 

 


『せみってね!こんなふぅにみーんみーんって

 

 


うたえるようになるまで、7ねんもかかるんだって!おじぃがいってたっ!!』

 

 


「7ねんって、いまのおれとまいきといっしょだよね?」

 

 


『うん。おなじ7さいだね!』

 

 


「知らなかった!おじぃってやっぱなんでもしってるんだね!」

 

 


「すごいやー!」

 

 


弘樹はあたしではなく、

 

おじぃをすごい!っと言ってた。

 

 


『それでね!1しゅうかんでしんでしまうんだって!』

 

 


「え?」

 

 


あの時あたしが見栄を張んなければ、

 

弘樹にあんな想いをさせなかったのに・・・・。

 

 


「1しゅうかんって7にちだよね?」

 

 


『うん。』

 

 


弘樹はしばらく木に止まってる蝉を見ていた。

 

どのくらいたっただろう?

 

あたしは弘樹に声をかけることができなかった。

 

声をかけようか、どうしよか、と迷っていたら

 

弘樹が口を開いた。

 

 


「おれたちといっしょなんだ・・・。」

 

 


「ねぇ?まいき?」

 

 


『なに?』

 

 


「もぅ終わりにして帰らない?」

 

 


「せみがかわいそうだよ・・・・。」

 

 


弘樹が言った言葉。

 

今でも、ココロに響いている。

 

いつもニコニコ笑っているのに、

 

あの時の弘樹は、今にも泣き出しそうだった。

 

 


『ごめんっ』

 

 


「え?」

 

 


『ごめんなさいっ』

 

 


あたしは、弘樹に頭を下げた。

 

 


「なんでぇ?」

 

 


そう言うと、弘樹はしゃがんで

 

下からあたしの顔を見上げた。

 

 


「どうしてまいきがあやまってるの?」

 

 


『だって・・・・。』

 

 


よくわかんないけど、

 

なぜか目からボロボロと涙がこぼれてきた。

 

 


「なかないで?」

 

 


『せみはつかまえないよ?』

 

 


「うん。」

 

 


「それより、まいき?なかないで?」

 

 


『うん。』

 

 


弘樹はあたしが泣き止むまで、

 

ずっとそばにいてくれた。

 

あたしの顔を見て

 

ずっと心配そうな顔をして。

 

 


たった7年しか生きていないあたしたち。

 

だけど、蝉達にとって7年は一生。

 

あの時、まだ無知のあたしたちの頭で

 

一生懸命考えて出した答え。

 

いくつになっても、

 

蝉を、

 

人を、

 

自分を犠牲にしてまでも、

 

大切にできる人になれたらいいね?

 






 

 

 

 


 

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