【蝉の抜殻A】

 

「ねぇねぇ、まいき!したみててごらん?」

 

 


『ぅわーー!』

 

 


地面には、たくさんの穴ぼこがあいていた。

 

 


「なんだろね?」

 

 


『なんだろ〜?』

 

 


「だれかが おとしあな ほったのかな?」

 

 


『こんなちいさい おとしあな なんてみたことないよ!』

 

 


「そーだけど・・・・。」

 

 


『なんだろね?』

 

 


「なんだろね?」

 

 


あの時のあたしたちは、

 

まさかこの穴から蝉が出てきたとは、思ってもみなかった。

 

公園のどこ見てもたくさん穴があいていた。

 

 


「いち! にぃ!さん!  しぃー!    ごー!」

 

 


『なにかぞえてるの?』

 

 


「あなのかずだょ!」

 

 


弘樹はしゃがみこんで、1つ1つ数えていった。

 

 


「ろく! なな!  はちぃー!     きゅぅ!」


 

 

『あたしもかぞえるー!』

 

 


あたしも一緒になって弘樹の隣にしゃがみこみ数えた。

 

 


「いち! にぃ!   さん!  しぃー! ごっ!」

 

 


『「じゅー! ろくー! じゅーいち! はちー!じゅーはち!」』

 

 


「って!まいきー!!わかんなくなっちゃったじゃん!!」

 

 


『ごめん』

 

 


「あはっははははっははっ」

 

 


弘樹に怒られたから、

 

頬を膨らませて『ごめん』と言ったら、

 

弘樹に笑われた。

 

だけど、あの時のあたしは笑われたのに、

 

なぜか嬉しかった。

 

 


『あはっははっははっははっ』

 

 


弘樹の笑ってる顔を見てたら、

 

つられて笑っている自分がいた。

 

 


『ミーーーンミンミンミンミ〜〜ィ』

 

 


「ミーーーンミンミンミンミ〜〜ィ」

 

 


無邪気にあたしたちは蝉のマネをして、

 

公園を走り回って遊んでいた。

 

そしたら、弘樹がいきなり止まって

 

あたしに一言こう言った。

 

 


「おれ、うまれかわるなら せみ になりたい!」

 

 


『なんで?』

 

 


「なんでだろ?よくわかんないけどさっ!」 

 

 


『ひろき!せみになっちゃうの?それはいやだよ?』

 

 


「いや!うまれかわったらね?」  

 

 


『ん〜?』

 

 


あたしはあんまり弘樹の言葉を、

 

理解できてなかった思う。

 

生まれ変わったら蝉になりたいって意味を。



 

 

 

 


 

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