【蝉の抜殻C】

 

 

あなたは小さい頃のこと覚えてる?

 

あたしは覚えてるよ?

 

あいつらと過ごした時間、

 

たくさんの思い出が詰まってるから、

 

忘れることなんて、できないよ。 

 

今でも1つ1つ話すことができるよ?

 

あなたは小さい頃のこと覚えてる?

 

 

 


あの日は今日みたいに熱い日だった。

 

9時にあたしの家にくるっと言ったのに・・・・・。


 
あたしは待ちきれなくて、

 

玄関のドアを開けて、

 

今か今かと隣の家を見つめていた。

 

ついに約束の時間の9時。

 

これ以上待つことができず、 

 

隣の家まで走っていった。

 

 


『ひぃーろぉーきぃーーーーーー』

 

 


あえてインターホンをおさず、叫んだ。

 

すると2階の窓から顔を出して言った。

 

 


「ごめん!でもまだ8じ59ふんだよ?」

 

 


そう言うと、階段をドタドタと下りてきた。

 

あの日のあたしはいつもよりウキウキしてた。

 

小学校初めての夏休み。

 

夏休みに入るずっと前から約束していた虫捕り。

 

とくに蝉を捕まえようと。

 

前の日から、あたしは準備していた。

 

夜も早くベットに入ったのに、

 

ぜんぜん寝れなかった。

 

まるで遠足に行くかのように。

 

 


弘樹とあたしは幼馴染。

 

オムツをはいていた時から

 

毎日毎日遊んでいた。

 

兄弟のいないあたし。

 
 
弘樹も1人っ子だったから。

 
 
まわりからは、よく兄弟に間違われたりしていた。


 
今でも一緒にいる時間が多いかもしれないね?

 

 


頭には麦わら帽子。


 
手には、弁当に虫網。


 
そして首から虫かごさげていた。

 

 


「おかぁさんがべんとうつくるのおそいんだ、だもん!」

 

 


そんな格好で玄関ドアを開け、出てきた弘樹が言った。

 

髪の毛がねぐせであっちこっちはねていた。

 

 


『ねぼうしたんでしょ?』

 

 


「してないよ!」

 

 


そう言った弘樹は下を見て、頭をかいていた。

 

 


『ほんと?』

 

 


「ほんとだし!べつにおくれてないじゃん!はやくいこっ」

 

 


自転車にまたがりあたしに言った。

 

 


目には真っ青な空が。


 
耳には虫たちが歌って声が。

 

顔には暖かい風がぶつかる。

 

さとうきび畑の通りを、走りぬけ


 
目的地の公園へ。

 

誰か、先客が来ているかと思って、


 
物凄い勢いで、ペダルをこいできたのに。

 

 


「だれもいないね?」

 

 


『だね』

 

 


自転車を止めながら、

 

そんな会話をしていた。


 
公園には蝉達の声が響いていた。

 
 
何十匹、何百匹の蝉達が歌っているだろう?



 

 

 

 


 

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